【第10話】3日間の超特急。上司に奪われた引き継ぎ時間と、失った「優しさ」

本ページはプロモーションが含まれています
本ページはプロモーションが含まれています

頑張るほどに、心が遠のいていく。あの日、事務所に流れた冷たい風

上司に独占されたカウントダウン

 正社員Bさんが去るまでのカウントダウンが始まりました。私に与えられた引き継ぎ期間は、わずか3日足らず。 本来なら、もっと時間があったはずでした。しかし、残りの日数は「自分の引き継ぎがあるから」と上司Aに独占されてしまったのです。上司自身の保身のための時間は確保され、現場を実際に回す私の時間は削り取られる。この組織の歪みが、すでに露呈していました。

さらに上司Aは、辞めていくBさんに最後まで冷淡でした。残業を一切禁じたため、Bさんは日々のルーティン業務をこなすだけで精一杯。私がノートを広げて質問しようとしても、「ごめん、時間がない」とすぐに自席へ戻ってしまう。 「時間がないのに……!」 焦りとイライラが募る中、引き継ぎは最悪の形で進んでいきました。

「基礎」を飛ばした、砂上の楼閣

驚いたことに、本来のメイン業務である「月次(毎月の処理)」の説明は一切省かれ、いきなり「四半期決算」の引き継ぎが始まりました。

計算の根拠もわからないまま、魔法の呪文のようにエクセルの複雑な数式を見よう見まねでコピーする。在庫の計算方法も、不一致が放置されたままの買掛金の表も、「ここにこの数字を入れて」という指示だけで終わりました。 「何が合っていないのかさえ、わからない」 そんな時限爆弾を抱えた状態で、Bさんは去っていきました。送別会をしようとする会社が、本人にかたくななまでに拒否されるという、あまりに寂しく、後味の悪い幕切れでした。

責任感という名の刃

Bさんが去った後、本当の地獄が始まりました。 月次業務の詳細を知らない私は、担当の先輩派遣に聞くしかありません。しかし、彼女もまだその業務を始めて半年。全貌を理解しているわけではありませんでした。

「どうしてここが合わないの?」 「ここ、前はどうしていたの?」

チェック者としての責任を全うしようとすればするほど、私の言葉は鋭くなっていきました。正しさを守ろうとすればするほど、私は優しさを失っていきました。問い詰める私の声は、もはや質問ではなく、検察官の尋問のようになっていたかもしれません。

一番の理解者であり、この過酷な現場を共に戦ってきたはずの先輩派遣さん。 私たちの間に、修復しがたい冷たい空気が流れ始めました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました