【第6話】「派遣が正社員を教育?」矛盾だらけの体制と、上司の「絶句する一言」

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「教える側」は非正規、 「叱られる側」も非正規。 組織が壊れる音を聞いた、 4月の事務所。

不条理な辞令。「教えるのは、私たちですか?」

新体制が始まる直前、上司Aから一通のメールが届きました。 「4月から正社員Cが経理に入ります。未経験者なので、丁寧に教えてあげてください」

私と先輩派遣は、顔を見合わせました。 「……私たちが、正社員を教育するの?」

本来、社員の教育は会社の責任であり、派遣の契約範囲を超えています。ましてや私たちはまだ2年目。自分の業務を固めるので精一杯な時期です。
しかし、上司Aは事もなげにこう言いました。 「うちの会社では2年目はベテランとして扱うから」
2年目でベテラン? そのあまりに都合の良い「肩書き」に困惑しながらも、拒否権などない私たちは、重い溜息を飲み込み「承知しました」と返信するしかありませんでした。

怒涛の4月。5分おきの質問と「格闘」の日々

新体制がスタートすると、事務所は戦場と化しました。 私は、新しく担当することになった業務を先輩から引き継ぎつつ、隣では未経験の正社員Cさんから「5分おき」に飛んでくる質問に応対しなければなりません。

経理の現場において、月初の締め作業は1分1秒を争う戦いです。 「4日目までに、すべての数字を確定させなければならない」 焦りとプレッシャーで神経が擦り切れる中、必死で画面と格闘していた私に、上司Aが背後から冷たく言い放ちました。

りんさん、引き継ぎながらやっているのは分かるけど、仕事が遅い。締めまでに間に合わないよ。

……一瞬、頭が真っ白になりました。動かしていた指も、思考も、すべてが止まったのを覚えています。(誰のせいで、どんな状況で、私が今この席で戦っていると思っているのか。なぜ、教えるべき立場のあなたが代わりに教えないのか。) 言い返したい言葉を喉の奥で必死に押し殺し、ただ震える指先を動かし続けるしかありませんでした。。

余談ですが、この時の私の驚きぶりを、先輩派遣は今でも覚えています。「あの時はりんさん、本当に漫画みたいに目が点になっていたものね」と、今では笑い話にされます。 でも当事者の私としては一生笑えない話。「ちょっと、自分の身になってみてよ!」と、今でもムキになって言い返してしまうのです。

「派遣」という見えない壁

一方で、前任の正社員Aから後任のBさんへの引き継ぎも、絶望的な状況でした。 あまりの業務量の多さに、Bさんはメモを取るのが精一杯。このままではBさんがパンクし、そのしわ寄せがこちらに来るのは目に見えていました。

「まだ前任のAさんがいるうちに、少しでも手伝えるところは手伝いたい」 そう考えた私が「何か手伝えることはありませんか?」と上司Aに申し出たところ、返ってきたのは信じられない言葉でした。

「あなたは、自分の仕事だけきっちりやってください。なぜこちらのことまで気にするんですか。」

それはまるで「派遣ごときが余計な口を出すな」と言わんばかりの拒絶でした。 あとで先輩派遣からも「あの言い方はすごかったね……。あそこまで言うんだから、あとは社員さんたちで何とかするんでしょう」と同情されるほどの冷徹な態度。

私は心の中で、静かに、しかし強く誓いました。 (……分かった。もう二度と、あなたたちに助け舟なんて出さない。あとで泣きつかないでね。)

崩壊していくチーム

1ヶ月後、前任者が去り、残されたのは「業務を何も把握できていない」正社員Bさんでした。

連日、上司Aの説教が事務所に響き渡ります。説教で時間が削られ、さらに仕事が遅れるという最悪の悪循環。 追い詰められたBさんは、ついに上司の目を盗んで、私たちに「助けてほしい」と隠れて泣きついてきました。 しかし、私はあえて、はっきりとお断りしました。 Bさんには申し訳ないけれど、上司から「口を出すな」と公然と拒絶された以上、その言葉を忠実に守って自分の仕事に専念する。 今の私には、リスクを冒してまで彼を手伝う義理など、一ミリも残っていなかったからです。

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